人間と同様、健康で長生きするためにワンちゃん・ネコちゃんも歯の健康はとても大切です。
キチンと歯みがきをして、歯周病の予防をする必要があります。
とは言っても、歯みがきどころか口を触らせてくれないコが多いのも事実です。
当院では「一生自分の歯で美味しく食べる」というコンセプトのもと、定期的な歯科検診やそのコにあったホームデンタルケアの紹介などをしています。
• 口の臭いが気になる
• よだれが多い
• 歯茎が腫れている
• 歯肉から血が出る
• 歯垢や歯石がついている
• 歯が折れた
• ペロペロ、クチャクチャ口を気にする
• 口周りを触ると嫌がる
• 前足で口のまわりをよく触る
• 食べ方がおかしい(片側で食べる、よくこぼすなど)
• 硬いものを食べたがらない
など
上記の症状に心当たりがある場合は、大切な小さな家族が歯周病にかかっている可能性があります。
⻭周病はワンちゃん・猫ちゃんの口腔内疾患で最もよく見られる疾患です。2歳以上の70%以上が歯周病になっていると言われています。
歯周病になってしまうと、お口の中にいる細菌が全身へ運ばれてしまい心臓病や腎臓病になりやすいこともデータで示されています。
歯垢(プラーク)に含まれている細菌が歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨に感染を起こし炎症を引き起こすことで発生します。炎症は徐々に歯の根元まで達し最終的には歯がグラグラになって抜けてしまうこともあります。
歯周病が酷くなると、頬が腫れてきたり、歯が抜けたり、顎の骨が溶けて穴が開いたり、特に小型犬では顎の骨が折れてしまうこともあります。また痛みでご飯が食べられなくなることもあります。
それだけでなく、歯周病菌が血流にのって全身を巡り、心臓や腎臓など全身の臓器に影響を及ぼすこともあります。口腔内の環境を清潔に維持することは、健康で長生きをするためにもとても大切なことです。
①口腔内のチェックと丁寧な説明
まずは現在のお口の中の状況をしっかり診察させていただきます。(お口を触られるのが苦手なワンちゃんやシャイな猫ちゃんの場合、完全に診れない場合もあります)人間の歯医者さんと同じように口腔内の写真を撮らせていただきます。
その結果、そのコ、そのコの状況に合わせた提案をさせていただきます。
お家でのケアだけで大丈夫な場合はそのコにあったデンタルケアグッズのご紹介をします。
麻酔をかけての歯科処置が必要な場合もあります。麻酔ということで不安を抱える飼い主様もいらっしゃいます。その不安をできるだけ和らげるように、手術前の説明からなるべく専門用語を使わず、わかりやすい説明を心がけています。
麻酔をかけての処置が必要な場合、以下の流れに進みます。
②正確な検査としっかりとした治療
安全安心な麻酔をかけるために、手術日が決まったら、約1週間前に術前検査をします。
術前検査では血液検査、レントゲン検査、超音波検査を行います。
手術日は午前中にお預かりをし、点滴をしてから手術となります。
麻酔をかけて、歯科用のレントゲンで口腔内の撮影をすることでより正確に口腔内の状況を把握します。
歯周病が軽度な場合は、歯石と歯垢の除去を専用の機械を用いて行います。
高速回転するブラシに研磨剤を付けて歯の表面を磨き、表面をツルツルにします。
歯周病が重度の場合はレントゲン検査の結果を見て、抜歯処置を行います。
抜歯をした後、抜歯創の洗浄をし、縫合処置をします。
③処置後も万全なアフターフォロー
基本的には当日の夕方に退院となります。
麻酔覚醒後の様子によってはその後の通院や入院を相談させていただくこともあります。
抜歯をした場合には縫合部の再診を1週間後にさせていただきます。
溶ける糸を使用しているので基本的には抜糸の必要はありません。
歯科処置の後が本当のスタートです。
処置が終われば終わりと考える飼い主様も多いですが、再び歯石が付かないように毎日のデンタルケアが必要不可欠です。お家でできるホームデンタルケアグッズの紹介をさせていただいています。
1.ワンちゃん、猫ちゃんが怖がらないよう、痛がらないように処置するため
歯科器具が歯や口に触れたりすることに嫌悪感や恐怖を感じてしまいます。また処置によっては痛みを感じることもあります。トラウマになるとその後の日常的なデンタルケアも嫌いになってしまいます。
2.歯垢や歯石、洗浄した水を飲みこんだり、誤嚥したりすることを防ぐため
3.口の中の精密検査をするため
麻酔をかけることでしっかりお口を開けて診察することができます。
歯科レントゲンは口の中にフィルムを入れて撮影するので麻酔なしでは実施できません。
4.無理な抜歯による顎の骨の骨折や歯根の残痕を防ぐため
麻酔をかけることでしっかり状態を把握して無理な力をかけての処置はしないようにできます。
【当院では歯科処置は全て麻酔をかけて行っています。無麻酔での歯科処置は行っておりません。】
当院では「一生自分の歯で過ごす」という考え方を大切にしています。
歯周病が進行した状態になってから来院される方も多いですが、この段階になると抜歯をしなければ治療にならない場合もあります。ワンちゃん・ネコちゃんが「一生自分の歯で」元気に過ごすためにも、まだ歯が汚れていない段階からのホームデンタルケアと定期的な歯科健診が重要です。
破折
歯が折れたり、欠けたりすることを破折といい、犬ではひづめやガムなど※の硬いものを咬むことで、咬合圧のかかる上顎第4前臼歯に多く、猫では高所からの落下など、外傷による犬歯破折が多いです。破折により歯髄(歯の神経)が露出すると、そこに細菌が入り込んで炎症を引き起こします。また、細菌感染が歯根まで及ぶと「歯根膿瘍」という重度の感染症になり、頬の腫れなどが起こります。抜歯などの治療が必要となります。
※大きな硬いプラスチックのおもちゃや石、固い乾燥ジャーキー、アキレス、ヒマラヤチーズなどが原因になることがほとんどです。
乳歯遺残
乳歯が永久歯にうまく生え変わらずに、乳歯が残ってしまった状態のことを言います。特に小型犬では乳歯が抜けずに残る事が多く、歯周病や歯並びが悪くなるなどトラブルの原因になります。
乳歯遺残と避妊手術・去勢手術を検討する時期が重なることが多いため、多くの場合、同時に乳歯抜歯を行います。
猫の歯肉口内炎・破歯細胞性吸収病巣
難治性歯肉口内炎とも言われます。未だに原因は不明な点が多く、免疫機能の低下などが炎症を引き起こしているとも言われています。歯頸部(歯の頸)が吸収されて強い痛み、ヨダレなどが生じ、ご飯が食べれなくなり、酷いと口峡部や咽喉頭にまで炎症が広がってより酷い痛みが生じて衰弱してしまうこともあります。治療は抜歯(状況によっては全歯抜歯)や内科的にはステロイド、抗生剤、インターフェロン製剤、サプリメントの投与などがありますが、効果が高いのは抜歯です。
口腔内腫瘍
口内炎や歯周病の症状とも似ているため、注意が必要です。
腫瘍が大きくなると、歯周病に似た症状だけでなく、呼吸困難などの症状もみられる場合もあるため、進行する前に早期の対処が必要です。
手術の前にCT検査が必要になる場合もあります。